夢日記③

目が覚めると僕の部屋に勝手に人が入ってきた。

確実に部屋の鍵を閉めていたはずなのだが、当然のように入ってきた。

 

毎日顔を合わせている後輩だ。

 

何も言わず、にやにやしたまま僕の顔を見て

僕の顔を見ても変わらずにやにやしたまま、ゆっくりと室内に入ってくる。

 

後輩は表向きは僕に対して後輩面をしているが、僕はこいつが内心僕を小馬鹿にしていることを知っている。

 

僕は人の好意に対して鈍感なのと同じくらい、人の悪意に対して敏感だ。

 

誰それが誰それを好きだとか、付き合っているとかいうことは

自分だけが気づかなかったし、人から言われるまで疑いもしなかった(その度に素知らぬ顔をして裸になって交尾しているんだなあと思って驚愕していた)。

 

逆に、誰それが誰それを嫌っているとか、話したくないとか、近づくなとか、死んでくれとか、こいつはとんでもないカス野郎だとか思っていることは

かなりの確度をもって見透かすことができた(その度に素知らぬ顔をしていつかいきなり誰それが誰それをぶっ○すんじゃないかと思って恐怖していた)。

 

特に自分に対する悪意に対してきわめて敏感だったので

僕はその後輩が最近浮かべている表情からすぐにわかってしまった。

 

「こいつは僕のことを小馬鹿にしている」

馬鹿にするのではなく小馬鹿にするというのが何とも不快だ。

馬鹿にするのは否定だ。

相手の価値を全力で否定する意志の強さがある。

小馬鹿にするのは罵りだ。

相手のことをからかっているだけで、意志の段階ではどうでもいいのだ。

 

とにかくこいつは僕を小馬鹿にしている。

薄ら笑いは別におかしいからでも楽しいからでもない。

 

絶対にこいつは僕を小馬鹿にしている。

 

「なに?」

 

その証拠に、僕の問いかけを聞いてもにやにや笑うだけで無視する。

知らん顔をするわけでもなく

怒りだすわけでもなく

にやにや笑って僕の言葉は聞こえているぞと主張しながら

何も言わずに無視することで小馬鹿にしている。

 

やはりこいつは僕を小馬鹿にしている。

 

死ね。

 

心の中でつぶやいたが、後輩は平然と部屋の中をうろついている。

そして僕の方をちらちら見ながらにやにや笑っている。

 

僕は「死ね」と内心でつぶやいたことがバレたんじゃないか

声に出して「死ね」と言えない小心さを見透かされたんじゃないか

と考え出してますます不安になってくる。

 

ふらふらと後輩が部屋から出ていく。

 

ほっとする。

 

またいきなり後輩が部屋に入ってくる。

相変わらずにやにやしたまま。

もっとにやにやしているような気がする。

 

僕は「ほっとした」ことがバレたんじゃないか

後輩が黙って部屋から出て行ってくれて「ほっとした」ことを見透かされたんじゃないか

と考え出してますます不安になってくる。

 

いきなり後輩が部屋を出て行く。

 

びくっとする。

 

ふらふらと後輩が部屋に入ってくる。

 

僕は僕の部屋に大量のエロマンガがあることを唐突に思い出して

心臓を握りつぶされるような気持ちの悪さを感じてしまった。

 

後輩はにやにやしながら僕に近づいてくる。

と思ったら、いきなり方向転換して

エロマンガがみっしりと敷き詰められた押入れに近づいていく。

押入れの目の前で、僕の方を振り返ってにやにやした顔を向けてきた。

 

僕は「エロマンガを隠している」ことがバレたんじゃないか

と思った。

びくっとしたことがバレることよりもそちらの方が気になって仕方がない。

 

後輩はにやにや笑っているのに薄気味悪いくらいじっと僕を見つめている。

 

ああ~ああ~

と唸ってしまった。 

 

後輩は絶対に押入れを開けるだろう。

絶対にエロマンガを見つけるだろう。

 

馬鹿にするのは意志の全力の否定だから○されるかもしれないが

小馬鹿にするのはそうではないから○されることはないのはわかっていた。

 

だからこそ僕は絶対に後輩を○してやると思った。

ああやっぱり、本当に○すしかないんだなと思ってとても悲しくなった。

 

 

 

 

という夢を見た。

 

 

 

おわり