NTRが男尊女卑的であるという批判に寄せて―その2

登場人物

 

男A……寝取られる男

女A……???

男B……寝取る男

 

男Aと女Aの関係が、徐々に男Bと女Aの関係に移行していく。

この3人の構図がNTRの基本です(※自分は対多数のNTRは例外的と考えているので)

 

これらが描かれるのが概ねどスケベ漫画であること

どスケベ漫画を読んでせんずりをこきまくるのが概ね男であること

 

これらを踏まえると

男が行動の主体、女が欲求の対象になるのは当然です。

そして前述のように、NTRというジャンルにおいてはいわゆる「いちゃラブ」などのジャンルと比較しても「欲求の渦中としての女性」を強く印象づける傾向にあります。

 

しかし、ここで「男尊女卑」というレッテルを貼るのは、早漏としか言えません。

 

 

人物の関係性

 

男がNTRを眺めてせんずりをこくとき、感情移入する対象は主に2つあります。

寝取られる男と寝取る男。

 

幸せの渦中にある男女の仲が引き裂かれる……!

滾る欲望を女にぶちまけ、屈服させて優越感に浸るか

愛しの人をみじめにも奪われ、屈辱をかみ締めて劣等感に苛まれるか

自由に選ぶことができます。

まさに寝取り・寝取られ。

 

個人的な考えでは「寝取られ」移入派が優勢ですが、寝取られ男に移入するとしても寝取り男は必要不可欠な存在です。寝取り男がねちっこく寝取ってくれないと、寝取られ男の屈辱や苦痛もそれだけ薄いものとなり、感情が昂ぶりません。その逆も然り。

互いが依存しあう関係になっています。

 

性質上、どうやっても寝取られ男は弱く、寝取り男は強く描かれてしまいます。

しかし描写が弱いのではなく、弱く描写されなければなりません。

寝取られ男の弱さと寝取り男の強さ、それぞれが明確に描かれる必要があります。

光がなければ影がないように、光が強ければその分だけ影が濃くなるように、というわけです。

 

男女のNTRは概ね不健全な漫画で描かれることが多く、男女の本格的♂合体がメインに据えられる以上、尺の都合で寝取られ男の描写が薄くなりがちです。

しかしこれはNTRのジャンル内でよく批判される要因となります。

 

あくまで男二人は表裏一体、これが重要です。

 

 

人物の役割

 

登場人物には、役割が与えられます。

エロ漫画から聖書まで、ありとあらゆる物語に出てくる人物には、それぞれ役割が見出せます。

現実においても複数の人間が関係性を作り、物事が動くとき、何らかの役割が生じてくることを踏まえれば、創作においても当然と言えます。

 

限られた尺で特定のテーマを打ち出して描くためには、人物の役割を明確にすることが必要になります。 曖昧な役割を持たせたり不要な人物を描いてしまうと、テーマが希薄になるからです。

 

NTRというジャンルで描かれるテーマを具体的に挙げるとキリがないですが、共通していると言えるのが、「背徳」「裏切り」「罪悪感」などでしょう。

こうなると、人物の役割として「加害者」「被害者」が与えられるのも、想像に難くないですね。

 

つまり

 

男A……寝取られ男(被害者)

男B……寝取り男(加害者)

 

ここまでははっきりわかります。

 

まあNTRといえば 

寝取られ男が祖チンだとか甲斐性なしとか淡白だとか

寝取り男がデカチンだとかイケメンだとか精力旺盛だとか

一見すると「寝取られる方が悪い!」と言えなくもないのですが

ここでいう「加害者」「被害者」とは「善」と「悪」という役割には置き換えられません。

あくまで「害を加える」「害を被る」と認識されているという意味で、「加害者意識」と「被害者意識」とも言えます。

 

つまり

寝取られ男が「自分は寝取られている(被害者)という意識」

寝取り男が「自分は寝取っている(加害者)という意識」

を持っている。

これがそれぞれに与えられた、人物としての役割ということです。

 

これは上記の「人物の関係性」の項目で書いた下りからもわかると思います。

責任や善悪ではなく、あくまで被害者と加害者という役割が男二人に割り振られているという点に注目すべきなのです。

 

 

それぞれを踏まえてまとめると

 

人物の関係性

寝取られ男と寝取り男は表裏一体、強弱の違いはあれど相互依存の関係として描かれる

 

人物の役割

NTRという概念を中心にして、それぞれ被害者と加害者という役割を割り振られている

 

となります。

ここまで来ると、あと少しです。

 

ここまであえて触れてこなかった、NTRにおける最も重要な存在

女はどのような関係性の中で、どのような役割を与えられているのか

 

それらを総合すると「NTRが男尊女卑的である」とは言えない理由が見えてきます。

 

 

つづく